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笑説は事実より喜なり

笑説家 ヤマウチツヨシ/ガッカリさせない期待に応えて 素敵で楽しい いつものブログを見せる予!定。(BLOGで起こせよムーヴメント)

クイズ★前田の名前は何でSHOW 【前編】

この街の友達のふざけた話 笑説

 

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【 拝啓 おだやかな小春日和が続いております… 】

震えるペン先にいつも以上の力が入る。 この手紙を書こうと決めたのはもう何度目になるのだろうか。 しかし、その度に書くことを途中で断念した。

理由は至ってシンプルだ。受取人が不特定多数すぎて、いったい誰に送ればいいのかが解らなかったから。

いいや、それだけじゃない。

一番の理由は、やはりこの手紙を受け取った人が俺にブチ切れるんじゃないかという恐怖心があったからだ。 決して馬鹿にしたくて手紙を書こうとしてるわけじゃないのだが、読む人によっては馬鹿にしていると誤解される可能性が十分にある。 そう考えると恐くなり、手が震えはじめ、そして書くことを諦める。

俺は誰からも嫌われたくない八方美人症候群の人間だ。 人に好かれたいという願望が強い分、嫌われたらどうしようという恐怖心が常に心を支配している。

俺だってよくわかっている。

敵を作ることは簡単だが、味方を作ることは難しいということ。 そして、一度失った信頼を取り戻すことはもっと難しいことを。

でも、意を決して伝えなければならないことがある。 もう覚悟を決めたんだ。黙ってはいられないんだ。

八方美人なんかもう引退だ!一方ブスになったっていいんだ!

この事実を誰にも伝えずに生きていくことはもう耐えられない。

今は不特定多数の日本人を敵に回すかもしれない。もしかすると日本人の過半数かもしれない。

でもこの先、人類が滅亡する日が来た時、ウォーキングデッドみたいな世界になった時、この手紙を読んだ人が「あーこういうことね」と思ってほしいのだ!

いま俺が出来ることは、この事実を正確に伝えながらも相手に誤解を与えないようにすること。 俺に悪意はないということをしっかりと伝えることだ。

「悪意はないからな…絶対に悪意は……」

そう呟きながらペンを握る俺だが、なぜ笑いが込み上げてくるのかわからない。

自分でも説明できないんだ。

悪意はないはずなんだ。

ないはずなんだ…ないよね?ねぇ、ないよね俺?

たまにインスタで美人の女の子が、スタイルが圧倒的に違う友達の女の子と一緒に写った水着写真を投稿して「あー痩せたい」とか「あー整形したい」とか言ってるのとはわけが違うよね?

あれは悪意の塊だよね?あれって諸悪の根源だよね? あーゆー奴がいるから戦争が起こるんだよね?

そんな自問自答を繰り返しながらも、俺はさらにペン先に力を込めた。

 

【前編】アンマー

 

「すいません今日はお先に失礼します」

残業もほどほどに上司に挨拶を済ませると、川田裕美アナと釈由美子のスキップを足して2で割ったようなスキップをしながら俺は会社を後にした。 俺的に足取りは軽かったはずなんだが、客観的にはむしろ重かったようだ。

今日の俺は浮かれている。いいや、今日というよりはここ数日間ずっとだ。 なぜならば、明後日には人生最大にして最高の晴れ舞台・自分の結婚式があるからだ。

ここで浮かれなきゃいつ浮かれるんだって話だ。暗い顔なんかしてたら奥さんからブチ切れられるって話だ。

とにかく待ち合わせ場所に急ぐ。今夜は大事な予定がある。

明後日の結婚式に東京からも多数の友人がお祝いにかけつけてくれるのだが、その中の一人、前田くんと飲む約束をしているんだ。

この前田くんは僕の古くからの友人であり、僕と奥さんの愛のキューピッドでもある。 前田くんがいなかったら僕たち夫婦は、結婚もしていなければ付き合ってもいないだろう。

そんな前田くんは今回の結婚式のために東京から来てくれたんだが、式当日は披露宴が終わり次第、すぐに仕事があるため東京に帰ることになっていた。 式前日は準備で忙しいし当日もゆっくり話せる時間がないだろうと思って、今夜二人で飲む約束をしていた。

待ち合わせ場所の友人が経営するバーに着いた頃には、俺は晩年の清原ばりに両膝を痛めていた。 あのスキップのせいだということは間違いない。詳しくはYouTubeで検索してくれ。

店に着くと、前田くんすでにカウンターで飲んでいた。

『悪い遅くなった』

「やっと来たか。遅いよ」

笑って話しかける前田くんはハイボールを飲んでいた。頬を赤らめた前田くんは既に4.5杯は飲んでいるようだ。

とりあえず俺はビールを頼んで乾杯。久しぶりに再会にバーの経営者の友人も交えた三人で会話も弾む。 その話のメインは、やはり翌々日に控えた俺の結婚式の話題だった。

盛り上がる会話の流れの中で、俺は前田くんにこう尋ねた。

『そろそろお前も結婚するんじゃないの?』

すると前田くんが言った。

「いや実はね、もう結婚したんだよ」

なんだと、しばらく会わないうちに何の告知もナシに結婚してやがったのか。

『マジかよ!おめでとう!サプライズだな!』

「ありがとう。でもまだ後2つサプライズがあるんだけど(笑)」

なんだと、これ以外にもサプライズが用意されているのか。しかし、俺はすぐにピンときた。

『もしかして子供ができた?』

「あ、やっぱりわかるかー(笑)」

へーよかったじゃん!別に今のご時世でできちゃった結婚に偏見を持つ人はいないだろう。結婚に踏み切る良いキッカケの1つだからね。 で、あと一つは何だろう?もしかしてこれかなと思い、聞いてみた。

『もしかして養子になったとか?』

「鋭いなお前(笑) まー正確にいえば違うんだけど、そういうことだね」

前田くんは話を続ける。

「嫁さんの家族が先祖代々伝わってきた名字を大切にしてる家族でさ。だから、その姓を引き継ぐことになったんだ」

『つまり前田じゃなくなるってわけよね?』

「そうだね。でも養子になるってわけじゃないんだ。名字は嫁さんの姓になったよ」

そこらへんの詳しいシステムはよくわからないけど、素晴らしいことじゃないか。

何度も言うが今のご時世で、男側の名字が変わることなんて全然珍しくないし、それだけ嫁さんのことやその家族も大切にしたいってことが伝わってカッコいいじゃないか。

カッコいいぜ前田くん!嫁さんもその家族も、先祖代々大切にしてきた名字を前田くんが引き継いでくれてとても喜んでくれてるだろうな。

俺の結婚式の話に前田くんの結婚の話。幸せな会話で盛り上がる時のお酒は特にうまい。

その流れの中で前田くんがニコニコしながらこう言ってきた。

 

「さて問題です。俺の名字は何になったでしょうか!?」

 

普段は小田和正ばりに物静かな前田くんの声量が倍以上に膨れ上がるほどの高いテンション。

そう、ラブストーリーばりに突然【クイズ★前田の名前は何でSHOW】が始まったのだ!

このクイズはいたってシンプル。

【前田くんの名字が嫁さんの姓を受け継ぎました。さて名字は何に変わったでしょう?】

先ほども言ったが、普段は物静かなでハスキーボイスの前田くんが、小田和正ばりのハイトーンボイスで問題を出してくることなんて初めてだ。

ということは、問題にするだけの"何か"があるってことだ。

そしてヒントも既にもらっている。

「嫁さんの家族が先祖代々大切にしてきた姓だということ」

これは大ヒントだろう。そこで俺はピンときた。

ははーん、わかったぞ。つまりそういうことか。

名字が変わったことで自分の名前が芸能人と一緒になりやがったなコイツ!

と閃いた時、頭の中で何かが弾けた。

次の瞬間、あの日の記憶が走馬灯のように駆け巡ったのだ。

 


 

初夏の晴れた昼下がり、友人の下川ハヤトくんとCoCo壱でランチをしていた。

他愛もない会話の中、俺はつい先日に観たテレビ番組を思いだした。

「日本の珍しい名字の人を探せ」みたいな特集で、その中に「鼻毛 豊」さんという名前の人が実在したって内容だ。

それがもの凄い衝撃的だったので、笑ってくれるだろうとウキウキでハヤトに話をした。

その話を聞いたハヤト、間髪入れずに

 

「でもそれよりスゲーの知ってるぞ!“ウンチ タメゾウ”がいるらしいぞ!」

 

俺の話の倍以上の衝撃的な名前を出してきやがった。

言われた瞬間にさすがの俺も思わずコーヒーを吹きだした。

いや、食後のコーヒータイムだったのが不幸中の幸いだ。

カレー喰ってる時だったら福神漬けぶん投げてるところだった。

そして、ジワジワと怒りがこみ上げてきた。

この男はいつも人がする話のそれ以上の話を被せようとする悪い癖がある。

そして話を盛る疑いがある。

さすがにこの話は嘘に決まってるだろ。

話盛りすぎだろってことで俺は言った。

『オイふざけんな!そんなふざけた名前の人がいるわけねーだろーが!嘘つくなテメー!』

それを聞いたハヤトは、間髪入れずに

 

「いやマジだから!たぶんウンチの"ウン"の字が運勢の"運"とかでカッコいい字でcoverしてんじゃねーの?」

 

コイツ…まだ嘘を認めねーのか…

なんだよその"ウン"の字が"運"とかでカッコいい字でcoverって…

まず発音が気にくわねーよ…

せめてカバーて言えよカバーって…

なんでカヴァーって言うんだよ…

ウンチタメゾウがアーティスト風に聞こえんだろうがよ…

徳永英明かよ…

思春期に少年から大人に変われば変わるほど生きずらくなるだろその名前じゃ…

featuring JUJUかよ…

お前にフィーチャリングが必要なのはJUJUじゃなくてTOTOだろーが…

てかコイツ適当な自分なりの解釈でこの俺を論破しようとしてやがる。

このべしゃりの達人の俺に勝てるとでも思ってるのか?

ここで俺は本気を出すことにした。

無理やりな理由付けで論破しようとするハヤトに対して、

“俺史上最高クラス"の論破が始まったのだ!

 

『よーしわかったよハヤトくん。じゃあ百歩譲ってウンチさんがいるとしよう。

この長い日本の歴史だ、そりゃいるかもしれないな。

じゃあ仮にお前の名字がウンチだったとしよう。

もちろん仮だよ、仮の話だ。

そうだ、お前は今日からウンチハヤトだ。

どうだ感想は?

そうだろう?厳しいだろう?

生まれながらに大ハンデだな。

悲しくよな。でもしょうがないよな。

そんな名前の人がいるってお前が言ってんだから。

もちろんお前の家は裕福な家庭ではないぞ。

友達のオモチャや自転車を羨ましがってばかりの幼少期だ。

そして恐らく学生時代は不良になるだろうな。

そりゃそうだよ。お前はウンチなんだから。

心ない奴等から誹謗中傷を受けるんだから。

悔しいよな。でも頑張るしかないよな。

だってそんな名前の人がいるってお前が言ってんだから。

強さの意味をはき違えてケンカや悪さばかりを繰り返すだろう。

勝手気ままに遊びまわる本当にロクでもない男になるだろう。

でもな、そんなお前もある日、素敵な女性に出会うんだ。

優しさの中に凛々しさを秘めた宝石みたいなカワイイ女の子だ。

お前はその女性に恋をした。その人と結ばれたいと強く願うんだ。

でもさ、ここで問題があるわな。

そうだよ、お前、大ハンデ忘れてない?

そう、お前の名字はウンチなんだよ!

なかなかハードルたけーぞ。

でもな、ここからがお前の凄いところだ。

そんな大ハンデをものともせずに、持って生まれたルックス、そして努力で培ったトーク力を武器にその素敵な女性を口説き落とすんだ!

そしてそのまま結婚することになったんだ!

もの凄い快挙だよ。俺たちはスタンティングオペレーションだ。

でも勘違いするなよ。本当に凄いのはお前じゃないぞ。

お前を生涯の伴侶として選んだその女性の決断力が本当に凄いんだ。

だって自らの意志で名字がウンチになったんだ。

その勇気と決断力、そして何よりもお前に対する愛は本物だよ。

よくそんなステキな女性を見つけたよ。

そして結婚式を迎えるんだ。

「ただいまより、ウンチ家、早乙女家、ご両家の結婚披露宴を始めさせて頂きます。本日はご多忙の中…」

司会者が開宴の挨拶を始めたところで、式場全体がざわつくことだろう。

まずざわつくのは新婦サイドの人間だ。

「え?ウンチさん?ご主人の名字がウンチさん?」

そして、その数倍の驚きを見せるのは新郎サイドの人間だ。

「さ、早乙女さん!?旧姓は早乙女さんなの!?そんな品のある姓を捨ててよくもまぁ…」と誰もが愕然とするだろう。

しかし、それと同時に新婦・早乙女さんの新郎への真実の愛を誰一人疑わないだろう。

度が過ぎるほどの頑固な名字も、わがままも卑怯な名字もすべて、全てを包みこむような愛が新婦にはあるんだと。

今まで数々の結婚式を見てきた司会者やウェディングプランナー、さらにアルバイトのコンパニオンまで、今日の結婚式に関わっている全ての人々が、この清純な二人の幸せを願うはずだ。

幸せな生活を手に入れたお前。そして妻の妊娠が発覚する。

二人ともさぞかし喜ぶことだろう。こんなに嬉しいことはないだろう。

でも少し不安がよぎるはずだ。

「この子が物心ついた時に学校でイジメられるんじゃないか」って。

ああ、そうだ。お前が幼少期に受けた心ない奴等からの誹謗中傷のように…

この子は乗り越えてくれるだろうか…

両親を恨んだりしないだろうか…

そんな時、自分に言い聞かせるだろう。

「大丈夫、この子ならきっと乗り越えてくれる…いや、家族全員で一緒に乗り越えるさ!父さんと母さんはずっと味方だ!」

そして、お前が願うことはただ一つだ。

「ただ健康にスクスク育ってくれるだけでいい」

これから生まれてくる我が子を

木漏れ日のようなぬくもりで、

深い海の様なやさしさで、

全部、全部、全てを包み込んでいくと俺に言ったよな!

そしてあの日…俺に電話してくれたよな。

初夏の晴れた昼下がりに生まれたと聞きましたよ。

母親の喜び様は大変だったと聞きましたよ。

そして大きな声でお前が俺にこう言ったよな!

 

「ただ真っすぐ信じる道を歩んでほしいと願い込めて悩みに抜いた末にこの名を子供に付けた」

 

って言ったよね?

そう言ってたよね?

確かにそう言ったもんね?

 

で、その子どもに付けた名前が!

 

名字がウンチのお前が!

 

「ためぞう」って付けるわけねーだろがコラーーーこのボケクソカスがーーーー!!!!』

 

と、ハヤトに言っていけない決して口にしてはいけない正論を加減もせずに投げつけた。

それを聞いた隼人は、間髪入れずに

 

「お前わかってねーなー。たぶん離婚して母親の姓になったんだよ」

 

俺はハッと気づかされた。

ということは・・・

 

「ウンチ姓」が妻側で「早乙女姓」が夫側だったのか!!

 

つまり…ハンデを背負わされて生きてきた彼女を…

そんな彼女を救ったのが…ハヤト、お前だったのか!

まさかあのハヤトが…こんなにも妻を愛していたなんて…

早乙女ハヤト…なんてカッコいい名前なんだ。

生まれながらにジャニーズに入るべき人間じゃねーか…

本当の真実を知った時、そしてハヤトの本物の愛に気づいた時、俺は涙が止まらなくなった。

 

おいタメゾウ、聞いてるか?

お前の父ちゃんはな、本当にカッコいい男だぞ!

お前と、お前の母ちゃんを、心の底から愛してる最高の男だぞ!!

 

タメゾウ「じゃあなんで離婚すんだよ」

 

って確かにそうじゃねーかオーーーイ!!!!

 

別れてんじゃねーよ早乙女ハヤトおおおおお!!!!

 

タメゾウ「最悪せめて引き取れよ」

 

ごもっともでーーーす!!!!

 

せめてタメゾウを引き取ってやれよバカ!!

 

試練を与えてるんじゃないよバカ!!

 

アンマーーーーりよーーー!!!!

 


下川ハヤトの適当な解釈で論破された俺は、フリースタイラーとしての自分の実力の無さを思い知らされた初夏の晴れた昼下がりのCoCo壱での思い出。

永遠の愛とは何か、そして子供の名前の大切さについて考えさせられたあの記憶を、結婚式の前に思いだしたのは、逆に良かったことかもしれない。

話を戻そう。そんな初春の暗い夜下がりに「クイズ前田の名前は何でSHOW」が開催されたのだ!

【続く】

(※早乙女隼人は空想上の人物で実在する人物ではございません)

 

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