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笑説は事実より喜なり

笑説家 ヤマウチツヨシ/ガッカリさせない期待に応えて 素敵で楽しい いつものブログを見せる予!定。(BLOGで起こせよムーヴメント)

【リアル・クローズ】 第一話 「桜吹雪」

 

『クローズ』は、高橋ヒロシによる日本の不良漫画作品。1990年から1998年まで『月刊少年チャンピオン』(秋田書店)にて連載された。2007年には漫画『クローズ』を原作とした映画『クローズZERO』が公開され大ヒットとなる。

『クローズ』という題名は、不良少年をカラス(CROW)に例えたことから付けられている。 開始当初は超不良校・鈴蘭男子高校に転校してきた主人公・坊屋春道を軸に据え、様々な強敵と喧嘩を重ねて友情を育んでいく様子を描いている。物語が進んでキャラが増えてゆくにつれ、群像の中の個人描写にも重点が置かれるようになっていった。

 

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そんな不良漫画の世界に強く憧れていた中学校時代。そして思い描いていた理想の高校生活。 この物語は、オシャレでカッコいい不良に憧れたごく普通の少年が出会ったもうひとつの『クローズ』である。

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リアル・クローズ』は、ヤマウチツヨシによる日本の過酷学校作品。1998年から2001年まで『熊本県立XX工業高校』(熊本県)にて体験された。

『クローズ』という題名は、少年の感情を閉じる(CLOSE)に例えたことから付けられている。 開始当初は超過酷学校と知らずにXX工業高校に入学してきた主人公・ヤマウチツヨシを軸に据え 、様々な強敵な先生や先輩に恐怖し、次第に規律が育まれていく様子を描いている。物語が進んでキャラが増えてゆくにつれ、群像の中の個人描写にも素晴らしいストーリーが生まれるようになっていった。

 

リアル・クローズ】 第一話 「桜吹雪」

 

陽気な日差しに目が眩んでいた先週までの快晴とは打って変わり、外は春の雨が降っている。 信号待ちの時間にふと車窓から通勤途中の街路樹に目をやると、そこには昨日まで綺麗に咲いていたはずの桜の花が跡形もなく散ってしまっていた。 あっという間に散ってしまった桜の木を眺めると、過ぎ去っていく時の早さをつくづく感じる。それと同時に脳裏をよぎるのは、あの青春の一ページ目に言われた「あの言葉」。

長い人生を歩んでいると、人は誰もが心を打たれる忘れられない言葉に出会うだろう。 ある有名なアーティストは学生時代、担任の教師にこう言われたそうだ。

「ぬるま湯っていいよな。熱くねーから体が全然温まらないし、だけどあがると寒い。だからずっと浸かってられんだよな。でさ、お前はいつまでぬるま湯に浸かってんの?」

その当時は言葉の意味がわからずに無性に腹が立ったらしい。しかし、大人になった時にその言葉の意味を理解し、その恩師の偉大さを感じることができたという。

僕にだって学生時代に教師から言われた忘れられない言葉がある。 ただ、未だにその言葉の意味は理解できていない。 あの当時、その言葉のせいで僕の心に咲いていた満開の桜は一瞬にして吹き飛んでしまった。

まるで今日の街路樹の桜のように―。

 

1998年4月、僕は熊本にあるXX工業高校に入学した。

この学校は全国区の知名度を誇るスポーツ名門校だ。数多くのプロアスリートを育てたこの学校の野球部は特に有名であり、中学まで野球少年だった僕の憧れの高校だった。 入学式の日、僕は"大きな希望"と"少しの不安"を胸に抱きながら新天地へと足を踏み入れた。恐らくこの日に入学する全ての新入生が同じ気持ちであっただろう。

堂々と構える大きな正門を軽い足取りでまたがると、その先には上り坂がしばらく続く。 上り坂の両脇には大きな銀杏の木が何本も並んでいて、そよぐ春風に揺られて舞い落ちる葉は、まるで僕たちの入学を祝福しているフラワーシャワーのようだった。 坂を登りきるとそこに広がるのは、そびえる巨大な校舎、見渡す限りの壮大な敷地、そして光り輝くスポーツグラウンドの数々。まさにあの某有名テーマパークに初めて行った時のような光景が目の前に広がっていて、その衝 撃は強烈だった。 ふと周りを見渡すと僕と同じように目をキラキラ輝かせるたくさんの新入生たち。

「こんな夢のような場所が僕の新しい居場所なんだ!」

皆がそう口に出さずしても思っているのは一目瞭然だった。しかし、この時に初めに抱いた夢は"ただの幻"であり"ただの悪夢"だということに気づくのに、さほど時間はかからなかった。

入学式の翌日、前日の感動の余韻に浸っていた初々しい僕たちの教室で事件は起きた。

 

バチゴーーーン!!!!

 

突然、もの凄い衝撃音が鳴り響く。

テロにでもあったんじゃないかと思い、瞬時に机の下に身を屈める。しかしこれは爆発音ではなく、引き戸を力一杯にスライドさせたことにより発生した壁への衝突音だった。

「こんなスライダー自分が打者だったら絶対に打てない」と古田に言わしめた元ヤクルトの伊藤智仁のスライダー以来の衝撃の"スライダー使い"。

一体誰だ、そんなバカみたいな手首してる奴は。

教室前方の扉に目をやると、爆音の余韻と立ち込める煙の中から"ある男"がリングイン。いや、実際に煙は出ていなかったが、世界タイトルマッチと見間違えるほどの貫録の入場だった。

担任の先生ではない知らない男だ。

その男は一体どういうつもりで扉の引き戸を激しくスライドさせたのだろう。

手首から脳への伝達が下手くそなのか、あるいは僕たちへの威嚇なのか。恐らく後者であろうが、そこまで力一杯にドアをスライドさせるなんて地球に優しくない男だな。

もうこの時点で僕はその男が大嫌いになった。

そしてこの男こそ、僕の心の大桜を吹き飛ばした張本人なのである。

教室に入ってきた男は、歌舞伎役者ばりの鋭い「にらみ」を利かせて、ゆっくりと力強い足取りで中央の教壇へと向かっていく。その姿はまるで市川海老蔵のようだ。

舞台袖から中央へたどり着きフッと軽く一呼吸すると、改めて鬼の形相で俺たちを睨み出す。

まだ一言も言葉を発していないが、喋らなくてもハッキリわかった。

 

コイツ、なんかめっちゃキレてる!

 

一体なにが起きたんだよ!

 

男がなぜ怒ってる原因はわからないが、ただ恐怖で震える僕たちはまさに蛇に睨まれた蛙状態だった。

男はずっと僕たちをまるで犯罪者を見るような目で睨み続けている。

その只者じゃないオーラと存在感はすでに海老蔵を越え、悪を裁く「遠山の金さん」のように見えてきた。

そして男は、いきなり何の前触れもなく怒鳴りだした。

 

『月曜日は頭髪検査だぞオラー!この学校は厳しいぞオラー!』

『髪型は刈り上げ!もみあげは全部剃れ!前髪は眉毛より上で切れオラー!』

『守らない奴はどうなるか覚悟しておけよオラァァーー!!』

 

そう言い放つと僕たちを最後まで睨み続けたまま教室を出て行った。

 

なんなんだよコイツは!

 

なんでそんなにオラついてんだよ!

 

アウトレイジのオーディションか!

 

オラオラうるせーよ!テメーは孫悟空か!

 

まだ親しくないクラスメイトの表情が気になり周りを見渡した。

するとそこには、みるみるうちに顔が怖ばって青白くなっていくキョンシ―のようなクラスメイトの姿があった。

うん、それもそのはずだ。そんなの当たり前だ。

だってその三項目すべてに該当する有名人が“柳沢慎吾”以外にまったく思い浮かばない。

 

 

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慎吾ちゃん一択に尽きる。

兵藤ゆきも一瞬だけ頭をよぎったが、彼女の場合は前髪がアウトだ。

僕は高校に入ったらオシャレをしてモテたかった。

近所のおばちゃんから言われた渾身のリップサービス「ツヨシ君はキムタクに似てるね~」を真に受けた僕は、キムタクみたいにロン毛にすれば絶対モテると思っていた。

彼女ができないのは、この短髪のせいだから高校でロン毛にするという願いは、ここで早くも潰えてしまった。

テクノカットじゃあまりにも無謀すぎる。

柳沢慎吾が好き」と言ってる女子中高生なんか見たことない。

an・anの「抱かれたい男ランキング」に香取慎吾はいても、アバヨ慎吾はありえない。

入学して早々にもう学校にアバヨしたくなっている自分がいた。

しかし、そう簡単にアバヨるわけにはいかない。

だって母子家庭という決して裕福ではない家庭環境の中で、母親が頑張って高い入学金を払ってくれたことを僕は知っている。そんな母親の苦労をこんなことで無駄にすることは絶対にできない!

「郷に入れば郷に従わなけらばならない」

そう自分に言い聞かせ、俺はガッチリ刈り上げにしたんだ。

言われた通りにもみあげも剃り落とし、前髪もちゃんと短くした。

ただ、やはり"モテたい"っていう感情のすべてを捨てることはできなかったのだが。

 

そして月曜日。頭髪検査は五限目に予定されていたのだが、昼休み時間に遠山の金さんから職員室に呼ばれた。

恐る恐る入った職員室のドアを開け中に入り金さんの前に着いた途端、いきなり光のような戦慄が僕を襲った。

もの凄いSPEEDのBODY&SOULを太陽のように浴びたのだ!

いや違う、パンチ&キックを浴びたのだ!

 

バゴッ!!ドゴッ!!

 

あまりのスピードと手際の良さマックスの暴力による激痛ダパンプ

のたうち回る僕は思わず「ここは沖縄アクターズスクールか!」と言いたくなったが我慢する。

言葉が出ない僕に金さんは吠えた。

 

 

『ツーーブローーーック!!!!』

 

 

僕は我が耳を疑った。

後にも先にもない、あんなデカい声で「ツーブロック」という言葉を耳にしたことは。

よくもまーそこまで滑舌よく大きな声でツーブロックと叫べたことに感心する。

初めての散髪が嬉しくてテンションがおかしくなった子供でも、そこまでデカい声で叫ぶことはないだろう。

まだ「スポーツ刈り!」の方が可能性がある。

しかし俺の忘れられない言葉はこれではなかった。

いきなり殴られパニック状態に陥っていたが僕だが、大きく深呼吸をして落ち着き、状況を理解した。おそらくこの髪型が気に食わないんだろうなと悟り、僕は言い返した。

 

「ちゃんと言われた通りに刈り上げて、モミアゲ剃って、前髪切ってるじゃないですか!」

 

すると金さんは、この世のものとは思えない鬼の形相でこう言った。

 

 

『夢をみるなぁ!!夢を、みるなぁぁぁーーー!!!!』

 

 

 

 

 

えっ?

 

 

はい?

 

 

夢をみるな?

 

 

高校に入学したばかりの

 

15歳の少年に

 

ここで早くも夢みるな?

 

 

ここで早くもストップザドリーム?

 

 

長渕剛が歌ってそうな雰囲気あるけど、こんな夢のない歌は誰も歌わないだろう。

愕然と立ち尽くす俺に、金さんは間髪いれずに先ほどよりもSPEEDが増したBODY&SOULを浴びせた。

僕はとても悲しくなった。

 

先生、これってそこまで激しく怒るほどのことなのですか?

先生、最近あなたは大切な人でも失ってしまったのですか?

先生、そんなデカい声で激怒する人、セルに人造人間16号殺された時の孫悟飯しか知らないです。

先生、最後にこれだけはどうしても言わせてください。

 

信じてください。

 

僕の夢は決してツーブロックではありません。

 

どうか、それだけはどうか信じていただきたいです。

この時の反抗的な態度が仇となった僕はその後、先生からの風当たりは非常に強くなってしまった。

そしてこの後も続々と明らかになっていくXX工業高校の「行き過ぎた年功序列」に「理不尽な暴力」と「不可解なルール」。

完全なる治外法権が適用されたスクールライフに僕たちは愕然とするのであった。

遠山の金さんの謳い文句、「この桜吹雪、散らせるもんなら散らしてみろぃ!」というのがある。

先生、散らしませんよ。散らそうともしてませんよ!

なのに何でテメーが僕たちの心に咲いた満開の桜を木っ端みじんに散らしてんだよ!

 

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■次回予告 第二話「謎の校則 ワンポイントソックス編」【不定期連載】