笑説は事実より喜なり

笑説家 ヤマウチツヨシ/岡本太郎氏の『用心深く、いや臆病に今までの使い古されたパターンをなぞって何になるか』という言葉に感銘を受け、使い古されてないパターンのブログはじめました。

【世界のムチロー伝説】 第四話「ウェディングムービー ~激動の海外移住編~」

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【新章突入!】

【第四話】 「ウェディングムービー」~激動の海外移住編~

 

「あまり調子に乗ると担任の先生にボコボコにされ、首をしめられながら2階の窓から突き落とされそうになる―」

青白い部屋でビートたけしがナレーションしながら語ってくれそうなアンビリーバボー恐怖体験をしたムッチーの不遇の時代は、高校三年間まったく途切れることなく続いた。

教師からの執拗なワンマークによって繰り返される朝掃除と理不尽な暴力。

始めはオラついていたムッチーの精神も徐々に壊れ始め、教師の正拳はまるでジョジョのようにオラオラオラオラ突いていた。

この学校は甲子園常連の名門校だ。

アルプススタンドでの応援を夢見ていたムッチー。まさかスタンドにボコボコにされるとは思っていなかっただろう。

もういつ学校を中退してもおかしくない状況に陥っていた。

そんな時に支えてくれたのは、やはりクラスメイトだった。

「ムッチー、あんまり調子に乗るなよ。お前は自分に罪はないと思ってるかもしれないけど、俺が先生だったら間違いなく同じことやってるぞ…」

「ムッチー、鏡は持ってるよな?自分の顔を見てみろ。すげーイライラする顔してるぞ…」

自分のスタンドの能力に全く気づいていなかったムッチーに、友達たちは「客観的に見たムッチーの姿」を優しく説くことにより、少しずつ自分の愚かな才能に気づいていったのだ。

そしてムッチーは心を入れ替えた。堪え難きを耐え、忍び難きを忍んだのだ。

そして無事に高校を卒業。遂にこの支配から卒業したのだ。

 

ところが、だ。

卒業したところでムッチーの生活は何も変わらず、いつもボロ雑巾のようにボコボコにされていた。

そんな時、18歳の頃に家族旅行で訪れた中国の上海での記憶をふと思い出した。

『ああ、楽しかったなぁぁ・・・』

日本語で話しかけると人に怒られてばかりだけど、日本語を話せない状況にいた時は、みんな笑顔だったな。。。。

そしてふと思った。

『もしかして日本語話せない国なら、殴られないんじゃね?』

ここでムッチーは人生最大の決断を下す。

『もう日本ムリ!日本人恐い!世界に行こう!』と。

そう思いついた彼はすぐに行動に移し、ワーホリGETでいきなりカナダへと飛び立っていったのだ!

ここが間違いなく人生のターニングポイントになった。

 

旅立つムッチーを見て、俺たちはもの凄く心配した。

日本という平和の象徴のような素晴らしい国。その国の国民ですら、歩いてるだけのムッチーを見てボコボコしたくなる不快感を、いや、「こいつはボコボコにしなきゃいけない。みたいな使命感を人に与える男が、いきなり世界に飛びだしたら一体どうなるのかと。

 

死ぬでしょ。

そりゃ死ぬでしょ。

 

屈強の外国人相手にボッコボッコに撲殺される可能性が十分にあるでしょ。

もういつ殺されてもおかしくない。

俺たちはいつもビクビクしながら全国ニュースを見ていた。

しかし一向に訃報は届かない。

そう、ムッチーは俺たちの不安をいい意味で大きく裏切ってくれたのだ!

 

なんか外国人とは奇跡的にメチャクチャウマが合う!

 

そのおかげでムッチーは悠々自適な楽しい毎日を過ごしていた。

俺たちは安心した。心の底から安心した。

やっと安らぎを手にいれたのかと。普通の人が当たり前に味わっている平穏な暮らしをやっと手にいれたのかと。

このまま外国人と交流するような仕事ができたら天職なんだろうなと。

そんな生活を手にいれたムッチーは海外生活に味を占めた。

何気なく始めた海外生活は気がつけばカナダのトロントに1年7カ月。

その後グレイハウンドというバスで北米を3ヶ月以上かけて一周し20以上の都市を訪れる。

そしてキューバへ渡り、その後にオーストラリアへと移住先を変え、自由気ままに穏やかな日々を過ごしていた。

 

そんな生活を送るムッチーと俺たちは、少しずつ連絡も取らなくなっていた。

俺は安らぎを手にいれたムッチーを祝福する半面、少し面白くない気持ちの自分もいた。

 

「あー早くボコボコにされて面白いこと提供してくれんかなー」って思ってた。

 

そんな時、日本ではある出来事が起こった。

ムッチーの大親友であるKくんが結婚式を挙げることになったのだ。

その結婚式にKくんはムッチーを誘った。

しかし、やはり遠く地で生活をしている都合上、帰国することができなかった。

少しガッカリしたKくんを見て俺は、

「そうだ!サプライズで動画を送ってもらおう!」と考えたのだ。

 

俺はムッチーに連絡した。

「けい君の結婚式にサプライズムービーを送るから協力して!」と。

 

すると、いの一番で『もちろん!』と返事がくる。

さすが親友だ!これはKくん喜んでくれそうだ!

ワクワクしながら俺は、どんなムービーを取りたいかを簡単に説明した。

「結婚式の時に流す映像だから面白おかしくハッピーな映像をちょうだい!」と。

『オッケーオッケー!』と返事をもらい、数日後動画を送ってくれた。

 

「さーて、どんな映像かなー?」

 

その動画を再生した俺は硬直した。

 

映像に映し出されたのは、むき出しコンクリートに囲まれた薄暗い部屋だった。

 

 

スタートからツッコミどころ満載。

 

なんだよそれ…

 

どこだよそこ…

 

なんでそんなボロ工場のトイレみたいな場所で撮影してんだよ…

タイルとむき出しの管みたいなのが見えんだけど!

そこに突然、左からフレームインしてきた男。そう、ムッチーだ。

笑み一つ浮かべない表情で語りだした。

 

「ご結婚・・・おめでとうございます・・・」

 

 

おい。

 

おいおい。

 

どーしだんだよそのテンションは。

 

なんでそんなに憔悴しきった表情なんだよ。

 

一瞬「お悔やみ申し上げます」に聞こえたじゃねーか。

 

誰も死んでねーぞおい。

 

ちゃんと結婚式のお祝いムービーって説明したよね?

告別式の弔辞ムービーなんか頼んでないよね?

なーんかその後もブツブツ言ってる。

なんかずっとブツブツ言ってる。

まず何を言ってるか全く聞こえません。

何をそんなに囁いてんだよ。何でそんなウィスパーボイスなんだよ。

生理用品のCMですか?

夜用ウェディングですか?

天龍さんの方が何言ってるかわかるくらい何言ってるかわかんないよ君。

その後も映像に映る男は終始、全盛期の野村監督ばりにぼやき続け、その後カメラに向けて軽く会釈をすると、フレームアウトしていった。

 

これは大事件だ。

俺はすぐに連絡した。

 

「おいムッチー!俺説明したよな!これお祝いムービーだけん!Kくん結婚したんだけん!死んでないけん!頼むからさ、もっと笑顔で明るく陽気にお願い!」

 

言葉だけじゃ伝わらないと思い、俺はわざわざ「こんな感じ」ってのを自演したムービーを送ってやった。

すると、『ごめん、朝から撮ったからテンション低くかった(笑) 明日、録り直すね』と連絡がきた。

俺は安心した。

さすがにこれで大丈夫だろうと。映像付きで説明したし。

だって自分でもテンションが低かったのは自覚してたし。

次はちゃんとしてくれるだろうと安心して眠りにつきました。

そして翌日、取り直した動画が届いた。

その動画を見た俺は、再び硬直した。

我が目を疑いました。

その映像に映し出されたのは、あのむき出しコンクリートの部屋だった。

 

そこに左からフレームインしてきたある男。

 

 

デジャブやんけーー!!!!!

 

「まったく同じやん…俺の自演したサンプルムービー、何一つ役立ってへん…」

 

久しぶりに震えた。会いたい気持ちを抑えきれずにじゃなく、怒りで震えた。

笑み一つ浮かべない表情で語りだした。

 

「ご結婚・・・おめでとうございます・・・」

 

これさ、間違って前回と同じ映像を送ってきてないか?

 

そう疑うほど瓜二つの出来栄えだったのだが、よく見ると前回のが表情の柔らかさが10段階で"1"だとしたら今回が"2"くらい、声の大きさが2だとしたら3くらいには改善されている。

 

うん、てゆーかさ。

 

いちいち言わなくてもわかると思ったんだけどさ。

 

アナタはオーストラリア在住ですよね?

 

まずなんでその部屋をチョイスしたんだよ!

 

普通オーストラリアいるんだったら外で撮ったりしないのか!

海とかさ、町とかさ、もっといい背景あるでしょ間違いなく!

なのに何でそのむき出しコンクリートの薄暗い部屋。

そこに憔悴しきった無表情の男がフレームインからのウィスパーボイス。

 

 

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なんか見た事あると思ったら完全に映画SAWで見たことあるシーンじゃねーか!

 

お前、絶対にジグソウに監禁されてるだろ!!!

 

 

絶対ジグソウになんか言わされてるんだよきっと。

まさかオーストラリアで監禁されてるとは。

そのまま何の変化もない弔辞ムービーは何のハッピーさもなく終了したのだ。

もちろんこの映像が晴れやかな式場の舞台で流れる事はなかった。

彼は海外に移住した事により、人に殴られない代わりに悪魔に魂を売り渡してしまったのだろうか?

しかし、彼の波乱に満ちた誰も予想しないゲームの結末は、

まだまだ始まったばかりなのだ。【続く】

 

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