笑説は事実より喜なり

笑説家 ヤマウチツヨシ/岡本太郎氏の『用心深く、いや臆病に今までの使い古されたパターンをなぞって何になるか』という言葉に感銘を受け、使い古されてないパターンのブログはじめました。

【世界のムチロー伝説】 第五話「 YOUは何しに日本へ?」

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第五話「 YOUは何しに日本へ?」

人に殴られない代わりに悪魔に魂を売り渡してしまったであろうムッチーの海外生活だったが、まぁそれはそれで大正解だったであろう。

だって急に知らない人からいきなり殴られないんだから。

「打たれない」

そんな人間ならごく当たり前に回避できることが、日本にいる時のムッチーには、非常に困難だったのだから。

プロ野球のピッチャーなのかというくらい「打たれない」ことに魂を燃やす。

たしかに日本時代の防御率は最悪だ。

それを回避させてくれたのが海外生活。オーストラリアでノーヒットノーラン連発。

そんなノリに乗ってる大エース・ムッチーに、さらなる幸せが訪れる。

なんと、クラブで知り合ったかわいいカワイイ可愛い18歳の外国人の彼女が出来たのだ!

クソ野郎が!このロリコン野郎が!

羨ましいじゃねーか!てか女癖は日本の時から変わってねーなオイ!

キレイな街並み、可愛い彼女、そして平穏な暮らし。

こんなに沢山の幸せを手に入れたムッチーは、もうオーストラリアに永住したいと思っていたに違いない。

そんな順風満帆だったムッチーの生活に、ある悩みができた。

それは、いきなり襲ってくる「激しい歯痛」。

「何だそんなことかよ」って思うかもしれないが、彼にはとても苦痛の毎日だった。

恐らく虫歯だろう。でも病院に行きたくても仕事の都合上なかなか行けない。

そして何より医者に症状を説明するの大変だ。さらに医療費も高い。

いつ打たれるわからない恐怖に似たあの感覚。

突如、襲ってくる激しい痛みに怯えながら、苦しみながら悩んで過ごす毎日だった。

そんなある日、ムッチーの脳裏にある想いがよぎる。

「そうだ。これをきっかけに一度日本に帰国しようかな」と。

親友の結婚式でも帰ってこなかった男が、

毎日ナイスピッチングを繰り返している男が、

遂にその重い腰をあげ、日本に凱旋しようと決意したのだ!

苦い思い出しかない日本へ逆輸入。

帰国した瞬間、CAにぶん殴られるかもしれない。

帰国した瞬間、警備員に発砲されるかもしれない。

しかし、その恐怖を凌ぐほど、歯痛に苦しんでいたのだろう。

まぁいずれは日本に一度帰らなきゃと思っていたし、日本人の歯医者なら安心して治療してもらえる。

万全の状態に戻ってから、またオーストラリアへ戻ろうと。

そう決意したムッチーのオーストラリア生活は、やがて三年を迎えようとしていた。

 

日本への帰国の日。

 

可愛い彼女が、わざわざ自宅まで見送りに来てくれた。

なんて優しい子なんだと惚れ直すムッチー。

心配そうな顔でムッチーを見つめている彼女。

後ろ髪を引かれる思いではあったが、しばしの別れだ。

すぐ大好きなオーストラリアに戻ってくるんだから。

ここは男らしくカッコよくお別れを言わなければ。

「心配するな。しばしの別れだよ。すぐに戻ってくるから…」

「その時は…俺と…俺と…」

そう言いかけた時に迎えのバスがやってきた。

見つめあった二人は無言ではあったが、お互いが何を伝えようとしてるのは分かりあえたはずだ。

意気揚々とバスに乗り込んだムッチーは見送る彼女に手を振り、空港へと向かうのだった。

しかし、この先の地獄が待っていた。

 

彼は颯爽と日本行きのゲートに乗りこむ。

つもりだった。

 

しかし、入国審査官やいろんな職員に囲まれた。

不安が襲う。

違う…俺はテロリストなんかじゃないぞ!

エロリストだしロリコ二ストだけど、テロリストじゃないぞ!

すると入国審査官にこう告げられた。

 

『YOUのビザ切れてるじゃん。不法滞在ナウじゃん』

 

えっ?

そんなわけないでしょ。

 

『いや切れてるし。YOUもうオーストラリア二度と戻ってくんなよ!』

 

ちょっと待ってちょっと待って。何かの間違いだから、とりあえず一回家に帰らせて。

 

『いーや、待ちません。帰らせません。日本に帰れ。即強制送還です。バーイ』

 

 

終わった・・・

ビザが切れていることに気づかず不法滞在していた・・・

3年間有効だと思い込んでいたビザが実は2年分で、すでに切れていることに全く気付いていなかったのだ。

 

いやマジでやばいって!

 

だってアパートに家具やら洋服やら全部置いたままだよ!(シングルヒット!)

 

マジでオーストラリア戻れねーじゃん!!(ツーベースヒット!)

 

てか可愛いカワイイかわいい彼女と会えないじゃねーか!!!(スリーベースヒット!)

 

 

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世界の殴打製造機・ムチロー選手、復活!

 

NEWムチロー、顔じゃなく、心のヒット連発!

帰国前にいきなり三打数三安打!

しかも長打二本も含めて、サイクルヒットの可能性も匂わせつつ日本へ!

 

彼は泣いた。

強制送還の飛行機で涙を流した。

俺は何しに日本へ、、、、

 

俺は何しに日本へ帰るんだ!!

 

 

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やばいやばい。これは面白いことになりそうだ。

これは密着取材のやりがいがあるぞ!

 

 

帰国したムッチーを笑顔で迎えた取材班(俺たち)。

しかし、彼の顔に元気はなかった。

事情を聞いた取材班は、心から笑った。

慰める奴は一人もいない。本気で笑った。

流石それでこそ、取材班の知ってるムッチーだ!

最初も表情がすぐれないムッチーだったが、次第に落ち着きを取り戻し始めた。

「まあこうして友達に久しぶり会えたし、また頑張るか!」

しょうがないかと開き直ったムッチー。

とりあえず日本に帰国した本来の目的、「歯痛」の治療に行くことにした。

これでこの痛みともおさらばだ。

 

実家近くの歯科を訪れたムッチー。

とにかく先生に歯痛の症状を説明し、しっかり治療したいとの意志を伝えた。

快く承諾した先生は、入念な検査を始める。

隅々まで調べる。レントゲンも撮影するぬかりのなさだ。

しばし待ったのち、先生が笑顔を浮かべながら近づいてきた。

何で笑ってんだよ。

ははーん。さては、これから通いつめることになるだろう俺のことを、金づるとでも思っているんじゃないかな?

くそが!絶対にぼったくられねーぞ!

外国帰りをなめんじゃねーぞ!免疫はメッチャついてんぞ!

近くに着座した先生は、満面の笑みを浮かべたままムッチーにこう告げた。

 

 

 

 

「いやー凄いですねー。虫歯一本も見つかりませんでしたよ!(ニコッ)」

 

 

 

 

 

えええええええええーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!

 

 

うおおおおおおおおおおおおーーーーーーーー!!!!!!!

 

 

場外ホーーーーーーーーーーーームラン!!!!!!!

 

 

サイクルヒット達成!!!!!!!!!!

 

 

 

「先生、嘘でしょ?嘘だと言ってください!絶対虫歯あるでしょ!」

 

 

 

『いやー久しぶりに見ましたよー。こんな健康な歯は!(笑)』

 

 

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YOUは何しに日本へ!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

「じゃあ何で歯が痛いんですかー!」

 

先生も不審がる。なぜ虫歯じゃないことを喜ばない患者は初めてのことだ。

『いや、知りませんよそんなの』

そらそーだ。知るわけねーだろ。

ただの気持ちの問題だろ、気持ちの。

一体彼は何をしに日本へ帰ってきたのか?

神様は一体、彼にどんな結末を与えようとしているのか?

もうこれ以上、罰を与えないでくれ。

いや、でもやっぱまだ嵐が巻き起こる予感がするな・・・【続く】

 

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